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昨夜の騒動が嘘のように、今日は朝から超静かだ。
一夜にしてくたばりぞこないみたいに変貌した皆を起こした時も、朝御飯を食べた時も。
揃いも揃ってボロボロで顔を腫らしているのに、何があったのか言葉を濁して誰も教えてくれないのは何故なのか…
皆の様子もよそよそしくて変だし、何だか居心地悪く感じる。
そして何もわからないまま今のあたしは、恐怖の市中見廻り中だったりする。
たまたま非番の斉藤さんに、十番隊の影の隊長として付いて来てもらってる訳だけど…この人も静かなんだよねぇ。
あ、でもこの人は最初から落ち着いた感じの人だったんだっけ。
一応建前で先頭を歩くあたしの横に斉藤さんがいて、他の隊士達に気付かれないよう道案内してくれている。
相変わらず町の人達からは白い目で見られてるけど、その要因のひとつにあたしの髪の色が目立つって事もあるかも知れない。
きっちりとした性格の斉藤さんがいるからか、隊士達も緊張してるらしく一言も会話がないのが息苦しくて、
「やっぱ髪、黒くした方がいいのかなぁー。」
つい独り言をボヤいてしまった。
たっぷり十秒くらい経ってから、
「…そうか?俺はその色、似合ってると思うぞ。」
って喋ってくれたけど、まさか褒め言葉が返って来ようとは予想もしてなかった。
「そう?悪目立ちしてない?…さっきなんかさぁ、ちっさい子に『鬼だ』ってビビられちゃったし、マジでヘコんだよ。」
屯所の人達は見慣れたのか弁えてるから敢えて言わないのかも知んないけど、流石に町の人達はそうもいかないらしく好奇の目ならまだしも、怖いものでも見るような怯えた顔をする。
昨日はね、自分がテンション高過ぎてあんまり気にしてなかったけどさ。
「いくら何でも『鬼』はないわー。」
わざと聞こえよがしに大きな声を出すと、隣からちょっとだけ笑いが漏れた。
「まあ仕方が無いだろう。俺達が正しき行いと思っていても、町の者達から見ればその辺の狼藉者と大差無いらしいからな。」
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