青天の霹靂

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話しが弾んで、ちょっと場が和んできたかと思いきや、 「…行くぞ。」 「えー…またぁー?」 安っぽい旅館みたいなとこを見掛ける度に、斉藤さんは暖簾を潜って必ず店の人に声をかける。 上等そうなとこより古びたとこの方が、池田屋の時逃げた人達が隠れてそうだからって言ってたけど… 「主人はいるか。」 「へ、へえ…待っとくれやす。」 でも大抵の人達は、露骨に嫌な顔をしたりビビって引け腰になるんだ。 「えんばんとうちとこのお客はんに、ごくたれめは居たはらしまへん。」 「そうか…邪魔したな。」 「いえいえ、はばかりさんどした。」 そのクセあたし達が店を出てからこっそり振り返ると、店先に大量の塩を撒いてたりするし… 新選組って本当に嫌われてるんだなあって痛感してしまう。 「…食べ物粗末にすんなっつーの、勿体無い。」 本当に言いたい文句を飲み込んではみても、毒を吐きたくなる時もある。 「…そう腐るな、素直に主人が対応するだけマシと言うものだ。」 「けどさー…」 斉藤さん達は人間が出来てるのかも知んないけど、あたしは器がちっさい奴だからそこまで寛大にはなれない。 「済んだ事は気に病むな。…それよりそろそろ飯でも食おう、何がいい。」 何がいいと言われても他の隊士達もいるのに、あたしが勝手に決めていいものなのかと思い悩む。 「皆は何が食べたいの?」 後ろに話を振ると、 「あ、俺は蕎麦が食いたいです!」 「私は鱧(ハモ)がいいです。」 「…軽く懐石で。」 「あぶり餅も捨てがたいですよねー。」 「諸子(モロコ)はどうですか?唐揚げ美味いですよー。」 「俺、ぐじの塩焼きのが好きだなぁ。」 待ってましたとばかりに次々と連なる昼御飯のリクエスト。 「……良くわかんないけどあんた達の食いたいのが、てんでバラバラなのは良くわかったよ…」 、
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