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言ったと同時に、リトマス紙よりも早く真っ赤に変色した顔を見せられて、呆気にとられるくらいこっちが驚いた。
「………。」
…無言もやめてくれ、リアクションに困るから…
取り敢えず手前の串団子を頬張って、
「そ、そういえば、あの羽織りはもう着ないんだねぇ。」
苦しいながらも話題を振ってみる。
そしたら正気に戻った斉藤さんはひとつ咳払いをして、
「あ、ああ…それはな、」
ちょっとだけ吃りながら、わかりやすく説明してくれた。
あたしがこっちに来た池田屋の騒ぎの日、新選組の皆が着ていた羽織りは赤穂浪士の真似をした造りで、芹沢さんって人の見立てだけど本人は去年亡くなったらしい。
赤穂浪士なんて言われても、歴史音痴なあたしにはピンと来なくて、吉良上野介や討ち入りだと聞いても申し訳程度の知識しかない。
んで、この前は仲間か敵かを見分ける為に着てたけど、実際見廻り中に着る事は滅多にとか。
しかもあの羽織り…実は隊士達にはかなり不評で、近藤さんや土方さんも無理強いはしてないから、好んで着る人はいないんだって。
「そうなんだ…でもなんだかんだで、皆黒っぽいのばっか着てるから結局お揃いみたいだけどね。」
「隊服を嫌っておいて、派手な柄を選ぶ馬鹿はいない。」
「そりゃまぁね…」
言われてみれば平助から借りてる着物は、昨日も今日も地味な紺系色だったりする。
斉藤さんなんて真っ黒だし…
町の人から見て黒い集団は陰気臭いし刀を振り回すし、死神みたいな悪い印象を与えてるかも知れないなって思った。
しかもその中で特にあたしは、茶髪だから悪目立ちしてるんだよ…
『鬼』と詰った子供の顔がチラッと浮かぶ。
「…どうした、遠慮するな。もっと食っておかねば体力が持たんぞ。」
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