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「ありがとう。もし手が空いてるなら後でこの人外に連れていくから、寝かせられるように何か準備しといて貰える?」
桶の中の布を緩く搾りながら言うと、
「わかりました。すぐに準備してきます。」
頭を下げてから、威勢良く走って行った。
布を総司さんの額に乗せてあげてから、脱がせた着物も桶の水に浸す。
びしょ濡れの着物は総司さんの身体の上下に置き、腋と股下に着物の一部を挟ませた。
「総司さん、起きて。」
頬に触れて声をかけると細く目が開き、
「…へ…助…?」
渇いた唇が小さく動いた。
「お水口に入れるから、ゆっくり飲んでね。」
首をそっと持ち上げて自分の膝に頭を乗せ、半開きになったままの唇に竹筒をつけて、零れないように注いだ。
水が喉を通る度、喉仏がせわしなく動き、飲み終わると息を吐いてあたしの顔を見ていた。
「…あいつは…どう…なった?」
「あいつって?」
キョトンとして答えると、苦しそうに顔をしかめて口を閉ざしてしまった。
『あいつ』
後から来たあたしや斎藤さんには、それが誰に当て嵌まるのか解らないから、答えようがない。
「ねぇ、静かになってない?」
総司さんの頭を下ろし立ち上がって外を眺めれば、提灯を持った大人数が背中を向けて、同じ方向に歩いて行くところだった。
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