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「昨日山崎が甘味屋に連れてくとか言って、連れてかなかったんだろ?」
「あー…」
そう言われてみれば確かに、連れて行かれたのはうどん屋さんだった。
「お前、楽しみにしてたんだろ?」
「まあ…」
多少はね。
でもそんなに必死こくほど食べたかった訳じゃない。
…って、笑顔の土方さんに今ポロッと本音を言えば、あたしは確実に空気の読めない奴だろうな…
「そんで今日、付き添いついでに馴染みの甘味屋連れてけって、斉藤に金渡して頼んだんだよ。」
そうか、それで…お昼ご飯にはちょいツラい甘味屋チョイスで、自分のお金じゃないから斉藤さんは大食い選手と化したのか。
何と無く気持ち悪い感じで残っていたモヤモヤが、これで全て解決した気がする。
「そっかぁ…ありがとう。土方さん、優しいねぇ。」
砕けた笑顔が出たのは、気分が晴れたからだけど。
「お、おう。お前が喜んでくれたんなら、俺も…嬉しいってもんだ。」
斜め上の顔が照れたように赤くなって行くから、
「あ、あたしが嬉しいと、土方さんも嬉しいの?」
ついつられて、頬が熱を持つ。
すると支えていた土方さんの右手が離れて、自分の口元を覆った。
「あ、あー…まぁ、な。…てか、聞き返すんじゃねえよ……すげえ、恥ず…」
耳や首まで赤く染まり吃った口調が、年上なのに可愛いとさえ思ってしまうなんて。
ボーッと見惚れるあたしに、
「…ジロジロ見んな、襲うぞ馬鹿野郎。」
呟かれた言葉は、変な色気を漂わせていて…
どうしよう、何か…変な雰囲気になってるかも。
見つめあったまま、視線を外すきっかけがない。
掴まれた腕を引かれ、
「…雅…」
迫る唇が、あたしの名前を甘く切なく囁いた。
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