青天の霹靂

10/46

2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
「昨日山崎が甘味屋に連れてくとか言って、連れてかなかったんだろ?」 「あー…」 そう言われてみれば確かに、連れて行かれたのはうどん屋さんだった。 「お前、楽しみにしてたんだろ?」 「まあ…」 多少はね。 でもそんなに必死こくほど食べたかった訳じゃない。 …って、笑顔の土方さんに今ポロッと本音を言えば、あたしは確実に空気の読めない奴だろうな… 「そんで今日、付き添いついでに馴染みの甘味屋連れてけって、斉藤に金渡して頼んだんだよ。」 そうか、それで…お昼ご飯にはちょいツラい甘味屋チョイスで、自分のお金じゃないから斉藤さんは大食い選手と化したのか。 何と無く気持ち悪い感じで残っていたモヤモヤが、これで全て解決した気がする。 「そっかぁ…ありがとう。土方さん、優しいねぇ。」 砕けた笑顔が出たのは、気分が晴れたからだけど。 「お、おう。お前が喜んでくれたんなら、俺も…嬉しいってもんだ。」 斜め上の顔が照れたように赤くなって行くから、 「あ、あたしが嬉しいと、土方さんも嬉しいの?」 ついつられて、頬が熱を持つ。 すると支えていた土方さんの右手が離れて、自分の口元を覆った。 「あ、あー…まぁ、な。…てか、聞き返すんじゃねえよ……すげえ、恥ず…」 耳や首まで赤く染まり吃った口調が、年上なのに可愛いとさえ思ってしまうなんて。 ボーッと見惚れるあたしに、 「…ジロジロ見んな、襲うぞ馬鹿野郎。」 呟かれた言葉は、変な色気を漂わせていて… どうしよう、何か…変な雰囲気になってるかも。 見つめあったまま、視線を外すきっかけがない。 掴まれた腕を引かれ、 「…雅…」 迫る唇が、あたしの名前を甘く切なく囁いた。 、
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加