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そこでスッポリ抜けてしまっていた昨日の記憶が呼び覚まされた。
ーーああっ、そうでした!!
盗まれた…正確には余計なお世話で、勝手に取り上げられた下着達。
どこぞへ行方不明になっていた女子の必需品が、今まさにあたしの手へ無事に?戻ってきたのだ。
思い出した怒りに、ここは胸倉捕まえて怒鳴り散らしたいとこだけど、事情を知らない部外者がいる為それは諦める。
でも…聞き間違いか?
『似たようなもの』って、まさかのまさか…だよね?
チロンと山崎さんを見たら、丁寧な言葉とは正反対のドヤ顔になっていて、その意味深な笑みに心底嫌気が差した。
「…何預けてたんだ?」
気になったらしい土方さんのブスくれたツッコミに、
「あーいやあー、何だったかなぁー…あははは。」
へらっと笑って誤魔化して、
「じゃ、あた…俺はこれにて御免つかまつる!」
脱兎の早さでその場から逃げた。
ヒャーッ!冗談じゃないっ!
着古した下着を隅々まで観察されたのだとしたら、赤っ恥もいいとこだ。
コソコソと屋敷の中を移動し、一人になれる場所を探す…が、見廻りに出てた連中が続々と帰って来てるから、空き部屋もなけりゃ汚いトイレにも隠れられない。
どこ行くあても無く、不審者と化したあたしが彷徨い辿り着いた場所は…
外に二つある蔵の内の一つ、鍵の緩そうなボロい方。
そう、左之さん達に入るなって怒られた、拷問があったって方の蔵だけど…だからこそ、人が寄り付かないだろうと踏んだのだった。
…怖いけど、流石にもう片付けくらいはしてるハズだよね…
吐き気をもよおす程の生臭い空気を思い出し、胸が少しムッとしてきた。
けど風呂敷の中身を見るだけだから…その間だけ、息を止めるとか鼻摘まんで口で呼吸するとか、まあ何とでもなるっしょ。
辺りを確認してから、抜き足差し足忍び足で入り口に近付く。
悪い事をしているドキドキ感も手伝って、中途半端に引っ掛けてあるだけの大きな鍵を動かすにもちょっと時間を食ってしまったけど、人目につかず何とか侵入は成功した。
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