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「平助、どうかしたのか?」
「えっ?あ、いや、何でもないよ。」
おっといけない、トリップしてしまってた。
今は人の心配より、自分の身の安全を考えなきゃいけないのに。
そこへ蔵から出て来た隊士達が近寄る。
「原田組長、奴を中にふん縛ってきました。」
「おう、御苦労。そこの錠前しっかり掛けとけよ。」
「はい。」
「あ、組長、ちょっといいですか?」
「……え!?あ、俺!?な、何かな!?」
ひょっこり後ろから現れた名も知らぬ隊士君…あたしの方へやって来て、
「これ、蔵の入り口に落ちてたんですけど…藤堂組長のモノでしょうか?」
「ん?」
ぴろーん、と両手で広げられた小さな布はまさしく。
ーーーあたしのおパンオリジナルじゃん!
多分臭い蔵から早く出ようと焦って、風呂敷に包み損ねたんだろうけど…
「うっきゃあぁぁぁーーっ!!」
「ヒイッ!?」
「平助!?」
その途端、パニクるより先に奇声を上げて野生猿へと変貌を遂げたあたしは、隊士目掛けて飛びかかった。
驚いた隊士は尻餅をついたもののそんなもんはどうでも良く、見事お宝奪取に成功したのだった。
「ガルルルルッ!」
そしておパンを胸に抱きしめて、威嚇をしながら後退る。
「く、組長…?」
「オイオイ、どうしたってんだ?鎮まれ、どうどう。」
痛い程ドン引きされている中、左之さんだけは調教師みたいにあたしを宥めようとしていた。
でも、
「馬違うわっ!」
自ら猿に擬人化した事は棚に上げて、一先ずツッコミ返してやった。
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