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とにかく此処から退散せねば…
お猿さんと化して飛びかかった時に落とした風呂敷包みを、振り返り慌てて掴もうとした。
でもそれは伸ばした手の先から一瞬で消える。
「か、返せっ!」
同時に見えた足の主を睨み上げると、そこにいたのは…怪訝な顔をした総司さんだった。
「さっきから騒がしいですね。コレがどうかしましたか?」
結び目を摘むように持って、わざとあたしの目の前にプラプラぶら下げ注意を引く。
うわーっ!一番厄介な人が来ちゃったよ!!
「ちょ、それ返してってば!」
もう一度引っ手繰るつもりが、また虚しくも空を切る。
そして、意地悪な顔で総司さんが微笑んだ。
「はてさて…この落し物が平助のモノだって証拠はあるんですか?」
ーーな、何を言い出すんだ、この人は!?
「証拠も何も…俺が今落としたんだから、俺のに決まってんじゃん!ねえ、左之さんっ!」
「あ?…ああ、多分?」
中身を確認なんかされたら、何の用途でって説明までさせられそうでマジでヤバい。
なのに助けを求めた頼みの綱の左之さんが、戸惑いながら曖昧に相槌を打ったもんだから…
「多分…って事は確たる証拠は無いも同じですね。」
隙を見て取り返そうとする度に総司さんは身長と長い腕を活かし、高い位置へ高い位置へと移動させあたしを弄(モテアソ)ぶ。
こんな事なら、包みをコソコソ隠さなきゃ良かった…なんて後の祭りで。
「では中を見て判断しましょうか。」
「ええっ!?ダメだよ!それは凄く大事なモノで」
「ふうん…ならば尚更確認しておかないと。」
「いやマジであんた何なの!?大事なモノだからヤダっつってんでしょうが!!」
必死で奪い返そうとピョンピョン飛び跳ねるあたしをからかって、
「あはは、届いたら返してあげてもいいですけど、無理なら中身を見せて貰いますよ。」
手に握られた包みは、総司さんの最高到達点へと掲げられていた。
「もうっ、そんなとこ届く訳ないじゃん!返せっ、馬鹿総司!!」
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