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ついに揉み合うように肩から腕へと縋り付き、体重を掛けて引っ張りながらぶら下がる。
そうなると流石の総司さんも片腕であたしの重みには耐え切れず、辛そうに声を漏らし始めたものの…
「っ!?」
「…捕縛成功。」
少しずつ降りて来た風呂敷包みに手を伸ばしたところを、左腕でガッツリホールドされた。
ーー演技だったのか!卑怯なヤツめっ!
抜け出そうと藻掻いてもびくともしない。
「騙し討ちなんてズルいじゃん!」
「何の事ですかね?自分から抱きついて来たんじゃないですか。だったら私が抱きしめ返してもいいでしょう?」
うぅ…そりゃしがみついたけども!
「ってか、あんたが子供みたいな真似するからでしょ!?屁理屈ばっか言わないでよ!」
ギャーッ!近いっ、近いって!!
言い返すけど、総司さんの顔がやたら近くて意識せずにはいられない。
しかも更に、両腕でギュッと抱きしめられてしまった。
ちょっ…皆見てるって!!
後ろにいる左之さん達の視線も背中に感じるけど、あたしの眼には見廻りから帰って来た隊士達や、屋敷から傍観している皆様がしっかりバッチリ映っている。
そう、今まさに大注目されちゃってる訳さ!!
まあ当然、その中には土方さんとか新八さんなんかもいて…
「ゴラァ!総司っ、平助に何してやがる!」
「左之っ、ボケッとしてんじゃねえっ!取り返せ!!」
叫びながら急に猛ダッシュして来てるし!
土方さんなんか、マジで怖い顔して裸足のまんまだからね!!
「おうっ!」
「渡しませんよ。」
「ひうっ!?」
そんでこっちはこっちで、あたしを抱えた総司さんが左之さんの突進を避けたから、一瞬息が詰まった。
な、何故こんな事にぃぃーーっ!?
元はあたしがおパンを落としたのが原因だけど…まさかこんな大騒動へと発展するなんて思いもしなかった。
「待ちやがれっ!」
「ヤです。」
あたしを抱え軽々と走る総司さん。
「返せっ、この野郎!」
「おや?平助はあなたのモノじゃないでしょう?」
血相変えて追いかける、図体のデカい幹部が三人。
「お前のモンでもねえだろ!」
「残念でした、平助から抱きついて来たので今は私のモノです。」
それをただポカンと眺める隊士。
そりゃ呆気にも取られるよ…
だって、誰が見てもあんた達『男』の取り合いしてるようにしか見えないもんーーっ!
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