奇跡は突然やって来る。

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「…会津の連中だな。」 傍に立って同じに外を見た斎藤さんが、ボソッと呟いた。 「あいず?」 「今頃のこのこやって来て、手柄を掠め取れるつもりでいた馬鹿な連中だ。」 「じゃあ、アレを止めるって言ってたんだね。」 合点がいき頷いていると、水を持って来てくれた人が、 「組長!負傷者は外に集まるようにと副長の指示です!」 と叫びながら凄い汗だくな姿で走ってきた。 「寝かせられるとこは?」 「はい!用意してきました!」 「よし、総司さんを運ばなくちゃ。斎藤さん、あ…」 「どうした?」 振り返って横たわる総司さんを見て、一瞬フリーズしてしまった。 「で、でかい…階段もあるのに運べるのかな…?」 立っている姿を見ていなかったのと、横たわる姿を初めて見下ろした事で、総司さんがやたら身長が高い人だという事に気付いた。 ちょっと童顔のクセにバランス悪いなぁ… どう見ても新八さんや左之さんよりでかい。 あれこれと運ぶ方法を考え巡らせていると、 「大丈夫だ。」 二人掛かりで動かして斎藤さんの背中に乗せていた。 もう一人に支えられて立ち上がると、長い手足がぶらんぶらん揺れてたけど、平気な顔をしてる。 「身の丈はあるが、案外軽い。…行くぞ。」 歩き出した後ろに総司さんの着物を抱き抱えて、慌ててついていく。 急斜面の階段は一段づつゆっくりと降りて、何とか無事に一階へ着いた。
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