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大衆の面前でのお披露目だけは回避すべく、挙動不審な動きの中にも、
「な、何でもないよ。皆には全く関係ないもんだからさ、早く返して?山崎さん。」
合図のつもりで、ばっちんばっちんウィンクを送った。
それなのにこの男…
「どうしました?眼に埃でも入りましたか?」
なんて、お約束のボケをかます。
ーーーうっわ、こいつめっちゃ腹立つ!!許すまじ山崎っ!
勢い任せに正義の鉄拳ならぬ足踏みをしようとしたけど涼しい顔ですんなり交わされ、諦めきれないあたしは山崎さんの胸目掛けて、地味に数回ヘッドバットを食らわせた。
だけど…
「何を戯(ジャ)れてるんですか?くすぐったいですよ。」
とか言って、それはもう極上に意地悪ーく笑いやがった。
「うぅ……」
無駄な仕返しにガックリ項垂れるあたしを更にげんなりさせたのが、
「あーっ、何で山崎さんに懐いてるんですか!?」
「まさか…山崎が好みなのか?」
「そいつはダメだ!嫁を平気で泣かす最低な奴だぞ!!」
「お前もいつか捨てられるんだからな!?」
馬鹿野郎共の激しい勘違いだった。
「余計なお世話です。悔しかったらあなた方も好きに身を固めれば良いでしょう。ただし、狗の嫁になりたいと望む危篤なお相手がいればの話しですけどね。」
しかも山崎さんまで毒舌で応戦するから、すんごい嫌ーな空気になって。
一瞬即発かと内心ヒヤヒヤしてたんだけど、
『ん?山崎さん、奥さんいるっての否定しなかったなぁ』
って気付いて、サッと血の気が引いていく。
……奥さんいるのに、あたしにチューしたのか?…コイツ最低じゃん…
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