2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
そして次の日のお昼時。
同じ非番だから付いて来たいとゴネる新八さんはグルグル巻きに縛り上げられ、せめて往復に山崎さんを護衛に付けろと土方さんが気を使っても、
「私の腕が信用出来ませんか?」
山南さんはキッパリと断った。
そこまで警戒して、一体誰をあたしに会わせようってんだろ?
ドキマギしながら連れて行かれたお店は、こっちに来てから初めて入る一般ピープル向きでないリッチそうなお店。
到着するなり、
「ようお越しやす、お連れはん先に上ごてもろうておすえ。」
何ともまぁ色気ムンムンの美人さんに、二階へ案内された。
「あいたっ!」
「どないしはりましたん?」
「あ、いえ、何でも。」
美人さんの後ろを上るあたし、実は慣れない階段に、脛をゴツゴツぶつけまくってた。
どうして昔の階段ってやつはこうも急な造りなのか。
しかも板幅めちゃ狭なのに、一段一段の段差が高いときた。
池田屋でもそうだったけど不便でならない。
美人さんは慣れた足取りで、ひょいひょい上る。
山南さんはゆっくりなあたしに合わせてくれてるけど。
ーーチッ、最後に上りゃ良かった。
全ての段に脛をぶつけ終え、
「…青タン確定…」
顔を歪め呟くあたしを、
「?…こちらどす。お客はん、お連れはんお越しやしたえ。」
振り向いた美人さんが変な目で見てた。
ーーーほっといておくれよ。世の中には傷を負いながらしか階段を上れない、不器用な人間もいるって事なのさ…
心で語り掛けつつ苦笑いを浮かべてたら、
「へえ、早うお入りやす。」
襖越しに答えたのは、高音の可愛いらしい声。
、
最初のコメントを投稿しよう!