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ここは元居た世界よりも命の価値が低く、医療にしても技術や知識は足元にすら及ばない原始的な時代。
戻りたくても戻れない。
だからどんな形で、どんな場所で自分が最後を迎えるのかわからないと、あれだけ思い詰めていたんだけども。
明里さんの言葉を聞いて、ちょっとした心境の変化が芽生えつつもあった。
そりゃまあね、特殊も特殊…タイムスリップなんて体験しちゃってる訳だし、ハイパーネガティヴ思考にハマっても仕方ないっちゃ仕方ないと思うのさ。
でもなぁ…何て言うんだろ…?
『もうダメだー!生きていけないーっ!』とか『死んでやるーっ!』とか、実はそこまで絶望感が湧いてこないって言うかさ、浸れないって言うか…追い込まれてない感じ?
客観的に観てどこか諦めてるような、現実を少しずつ受け入れている自分もいるような気がするんだ。
あたしが馬鹿だから楽観視し過ぎなのかな?
勿論、蓮司達に会いたいって気持ちはしっかりと残ってるのに、今直接肌で感じてる確かな時間を、目を逸らさず触れ合い向きあってみれば。
嫌って程伝わってくるのは、あの人達のいる賑やかで暖かな空間が、異邦なあたしをやたらと優しく包んでくれてる事。
まるで孤独を遠ざけ、寂しさから守ってくれているかのように。
確かにあたしは『平助』に瓜二つかも知れないけど、女を置くのは職権乱用の咎なんでしょ?
それなのに命を懸けて助けようとしてくれてるんだから、感謝してもしきれない立場だ。
いつ死ぬかも知れない時代にあって、あたしの為に命を落とすかも知れない男達が、あの場所に何人いるのだろう。
やっと気付かされた想いは、熱く胸を締め付ける甘くて切ないほろ苦いモノだった。
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