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あたしは暫く泣き続けてた。
長い間溜まっていた膿を搾り出すように、腹の底から目一杯。
鍋を運んで来た美人の仲居さんには、めっちゃドン引きされちゃったけどそこは全くお構いなしで。
きっとあたしは今日初めて知ったこの気持ちを、一生忘れないだろう。
泣きながら食べた、ちょっとしょっぱくて…だけど甘くて優しい、人の暖かさに触れるきっかけとなったこの鍋の味も。
ひとしきり泣くだけ泣いてお腹も膨れたところで山南さんが、
「所用があるので、少しの間失礼しますね。」
と、部屋からいなくなった。
何だろう?って思ったら明里さんが、
「山南はんなりの気遣いどすえ。」
そう言って口許を袖で隠して笑う。
どうやら女の子同士、ゆっくり語れる時間を作ってくれたらしい。
元いた未来でだって本音トーク出来る人なんて限られていたのに、むっさい男ばかりに囲まれていたせいか、明里さんが気さくだったせいか…憂さを晴らすかのようにあたしの口は饒舌になっていた。
あの男共がどれだけスケベで手が早いかとか、不潔な連中も多くて臭いし汚いだとか。
そんな悪口紛いの愚痴ばかり話してたけど、明里さんが可笑しいと言って笑ってくれるから、つい調子に乗ってつるんと口を滑らせ、
「あたし一応男設定なのに、皆ぎゅうぎゅうしたりチュウチュウしたりしてきてさぁ、欲求不満かってーの。」
なんて余計な事まで暴露しちゃったから、さあ大変。
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