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「あー…ビックリした…」
「…えろう…すんまへんおした…」
どうにか気を取り直した山南さんに引き剥がして貰った後、着物についた鼻血を濡れ手拭いで拭きながら、鼻に栓をした明里さんを見下ろす。
当然明里さんの着物にも血の斑点が付いてたけど、幸い布地が赤色でそんなに目立つもんじゃなかった。
「いいよいいよ、あたしも紺色だし…ほら、もうわかんないでしょ?」
可愛い顔して鼻栓してる姿がまた愛らしく、ニシャニシャ笑い両手を広げて着物を見せた。
「本当に…申し訳ありませんでした。よもや、このような事態になるとは…」
明里さんの横に座り看病する山南さんが、軽く頭を下げる。
「だからいいってば。あたしがうっかり…」
…と、口を噤む。
一瞬、明里さんの視線がまたギランと光った気がしたから。
それに気付いた山南さんも、
「本当に…申し訳ない。明里は少し…いえ、かなりその手の話しには過敏でしてね。…それさえなければ、太夫にもなれる器なのですが…いやはや…」
またちょっぴり涙を浮かべる。
「たゆう?…って何?」
「島原の…遊郭に勤める女子の最上級の位、と言えばわかりますか?」
…島原?……キリシタンの島原なら聞いた事あるような?
無知過ぎて、こちらこそごめんなさいだ。
「ムム……ゆうかくって、何するとこ?」
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