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悪意なく聞いたつもりだった。
でも二人の顔色がサッと変わり、明里さんは目を逸らし山南さんはそんな彼女を優しく見つめる。
そこで『他人が立ち入ってはいけない領分だったんだ』と気付く。
誰にだって触れてほしくない部分はあるし、それはあたしにも当て嵌まる事だ。
「…さてと、あたしは先に帰らせてもらおうかな。」
わざとらしかったかもだけど、それが最良の措置だと思った。
「あ、嫌やわ…気ぃ遣わはらへんとっとくれやす。」
「そうですよ。お誘いしたのは私ですし、一人で帰らせる訳には…」
立ち上がったあたしに明里さんが縋り、ふるふると首を振って引き止めてくれる。
んで山南さんは少し険しい表情をして見せた。
「ん…でもさ、せっかくだから二人でゆっくり愛でも語らってよ。まだ外も明るいし、あたしは大丈夫だから、ね?」
訳ありっぽい恋人同士だからこそ、会えたこの時間を大切に使って欲しい。
「ご馳走様でした。お邪魔虫は早々に退散しまーす。」
なんて戯(オド)けて笑うと、
「嫌や、何言うてはるん。」
「…仕方ないですね。ではお言葉に甘えさせて頂く事にしましょうか。」
って、二人も照れ笑いしながら見送ってくれたんだ。
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