青天の霹靂

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相も変わらず神出鬼没。 これで何度目だっつーの。 いい加減この人の場合は、絶対わざと驚かせて楽しんでるんだと気付く。 「…何でここにいんの?付き添いは要らないって、山南さんから言われてたでしょ?」 探るようにジト目で見ると、 「別に迎えに来た訳とちゃうで?ほれ、使いっ走りや。」 そう言って、右手にぶら下げている割と小さな唐草模様の風呂敷包みを、誇示するように突き出した。 「…何それ?」 「副長はんは墨、沖田はんはみたらし団子、原田はんは金平糖、永倉はんは酒の注文行って来い言うてなぁ。ほんま、人使いの荒い連中でかなんわ。」 「…そりゃ大変だったね。」 となると、今回は本当に偶然通りかかったって事? 歩き出した山崎さんにつられて、自然と同じ方角へ歩き出す。 「…自分、山南はんの用事はもうええんか?」 「ん?…まあね。」 「一緒に帰らへんのかいな。」 「ああ、大丈夫大丈夫。了解とってあるから。野暮用があるって言うしさ、先に帰って来ちゃった。」 なんてのは咄嗟に出た嘘。 あの恋人同士のイチャイチャ振りを思い出したら、頬筋もだらしなく緩むってもんだ。 そんなあたしを見て山崎さんは凄く嫌そうな表情で振りかえって、 「…何ニヤついとんねん、気しょいやっちゃ。さっきはさっきで阿呆みたいに唄ってよるし…ついて来るんやったら、あんま寄らんとってぇや。俺までけったいな眼ぇで見られてまうさかい。」 犬猫を追い払うように、シッシッと手を動かした。 …やっぱこいつムカつくな…
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