奇跡は突然やって来る。

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この建物の玄関横には並べられた死体と、負傷した人達が並んでいた。 「こっちです!」 一緒に付き添ってた人が指差したのは、一枚の古い板。 何でコレ!?って言いたいのは山々だったけど、近くには血だらけで唸ってる人も板の上、手当てを受けている人は地べたに座ってるのを見たら、文句は言えなかった。 また二人掛かりで降ろされて、総司さんは薄目を開けた。 「…ありがとう。」 弱々しい笑みを浮かべていたけど、さっきの状態に比べたら大分マシにはなったみたい。 手に持っていた濡れた着物を、裸の上に広げてかけた。 「頭痛くない?」 屈んでおでこに触ったら、やっぱりまだ熱い。 「…ん、クラクラするけど…痛くはないよ…。」 「水持って来ようか?」 「…私はいいから…怪我した隊士を…。」 そう言われて少し離れた隣を見ると、血だらけなのに手当てをされず傷口に布が巻かれただけの二人が、浅く早い息をして脂汗を流し、苦悶の表情を浮かべていた。 「奥沢は即死だ。安藤と新田もかなりの深手を負っている。…厳しいだろうな。」 斎藤さんが他人事のように呟いた。 「お医者さんは?」 「別の者を走らせていますが…何分この刻では捕まえるのも一苦労かと。」 男は厳しい顔で首を振った。 、
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