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土方さんとの稽古は想像を遥かに超えて、とんだスパルタ式だった。
道場を締め切り一般隊士には完全非公開。
出入り口を付き添いの幹部達で封鎖し、ひたすらを素振りをさせられた後、休む間も無く打ち込み稽古。
試合をするにはまだまだ弱っちいあたしは、それはもうボロ雑巾みたいにヨレヨレで、お話しにならなかった。
「…ぜぇっ、ぜぇっ、…水…水が欲し、い…」
息は上がり乾燥した喉が引っ付いて、喋るのも精一杯だ。
「あ?水だぁ?…そんなに欲しいならくれてやる。」
ぶっ倒れた頭の上から声が聞こえた次の瞬間、
バシャーーーーーンッッ!!
「ぶっ!?」
大量の水が塊で降って来た。
「ゲホッゴホッゲホッ!」
「どうだ?お望みの水の味は。」
桶を投げ飛ばしヤンキー座りであたしを見下す表情は、やたら楽しそう。
ーーーアホか!こんなにいらんわっ!つーか鼻に入っただけだっつーの!!
声にならない叫びを簡単に纏めると、
「…ドS、め…」
この一言に尽きる。
「どえす?それは褒め言葉か?」
んな訳あるか!二重人格者めっ!
などと、ツッコミする余力すらない。
明らかに高揚してる表情が、サスペンスドラマの殺人鬼を匂わせてるとか、これが演技なら凄い役者だ。
「オラ、さっさと立て。飯抜きにすっぞ。」
…役者じゃない、本物のドS鬼畜、土方歳三。
今日を限りに、この人に教えを請うのは止めておこう…と、密かに誓った。
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