奇跡は突然やって来る。

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助けられる命なら助けてあげたい。 でもあたしには医療の知識は無くて、救急車も呼べないしお医者さんもすぐに来れなくて…。 「…何にもしてあげられない…。」 沢山の死体に囲まれて殺されそうになったりで、突然の出来事に麻痺していた感覚が、少しずつ戻っていく。 悔しいのか悲しいのか…今の信じられない状況に絶望したのか…涙がじんわりと浮かんできた。 「夢ならいいのに…。」 溢れ出した涙は止まらず、頬を伝って落ちていった。 「泣くな。皆覚悟を持ってやった事だ。」 他人に心の痛みが解る訳もなく、斎藤さんは冷たく言い放つ。 言い返す言葉が見つからず目を閉じると、頭に大きな手が乗ってあやすように撫でられた。 「…平助は…優しいんだよ…。」 自分が大変なのに、あたしに気を使う総司さんの方が、よっぽど優しいって思った。 涙を拭いて鼻を啜っていたら、あたし達に近付いて来る人がいた。 「総司、目が覚めたか。」 聞き覚えのある声は、 「…土方さん。」 と呼ばれた。 、
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