稽古はツラいよ?

9/22
前へ
/412ページ
次へ
送られる冷ややかな視線に、 「あなたに言われる筋合いはありませんね。大体何です?その気持ちの悪い喋り方。コロコロ変わる統一感の無さ…山崎さんこそ節操無しの変わり種じゃないですか。」 沖田は我慢せず怒りを露わにした。 ーーガラガラガッシャーン!! 「「「おおっ!?」」」 「「「何だ!?」」」 二人の間に見えた稲妻は夢かはたまた幻か… 「チッ、ガキが。」 「色魔爺い。」 土方の時とは違い互いが歪(イビツ)な顔で睨み合い、 「「ケッ!」」 同時に唾を吐き背を向ける。 別方向へ姿を消した二人を見送り、一同は唖然と開いた口で生唾を飲んだ。 「…山崎君、おっかない…でも唾だけは拭いてって…後で歳に怒られるから…」 「声ちっちゃ!しかも山崎さん、もうとっくにいねえし。」 「あれ?近藤さん、えげつない山崎さんはお初か?」 「山崎さんもなぁ、大人気無いっちゃー無いんだけどよ。」 「総司のヤツも、雅が関わると異常にピリピリしやがるし。」 「ぱっつぁん、『平助』。」 「おうおういけねえ、『平助』だ。」 「俺達も気をつけねばならんな。…秘密を知る者として。」 斉藤が見渡すと皆はそれぞれに頷く。 「そうさな、俺達に出来る事は何でも協力してやろうぜ。」 「一番大変なのは『平助』なんだしよ。」 「しかし、だな…今早急に対処すべきは…」 「…うお…誰がすんだよ…」 皆が渋い顔で見下ろすのは、畳に張り付いた二人分の唾だった。 その後、この場に居合わせた者だけで先々の稽古内容や順序を話し合ったが… 取り敢えず傍迷惑な約三名は、平助の師範から真っ先に除外された事は語るまでも無い。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加