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恐ろしく素早い動きで後退る様は、雅の目を覚まさせるに充分であった。
「…ワザと?って…何が?」
「え!?い、いや…」
青い顔で赤くなっていたが、気付いていないと知るや否や、
「な、何でもねえよっ、馬鹿!」
今度は何故だか怒り出す。
「はあ?意味わかんないんですけど…」
誰しも突然罵倒されれば、腹も立とうというもの。
眉間にシワを寄せて起き上がろうとした雅だが、
「いっ、だだだ…っ!」
ギシリと軋む痛みに耐えかね、更に深いシワを作り身体を抱き締め丸くなる。
「お、おいっ…大丈」
「ーー失礼します。」
声を掛ける間も無く現れたのは山崎で、ギョッと驚く土方には目もくれずスタスタと一直線に雅を目指した。
「…無理せんとき。」
「うー…だって…」
「ほれ、力入れんと身体預けぇ。ちいっとずつ倒すで?」
腕を回して肩を抱きそろそろと慎重に沈めれば、痛みで止めていた息がフウッと吐き出された。
「…あんがと…」
「謝らんでええ、全部副長はんのせいやん。」
「っ!」
その様子を呆気にとられ見ていた土方は、矛先が自分に向き酷く焦った。
「俺の、って…てめえぇ…どっから覗き見してやがったんだ?」
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