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あんな態度を取られれば、普通は誰しもそう思う。
ましてや自分から稽古を申し込んでおいての、この体たらく。
撤回する前に見放されても、仕方ないというものだ。
「…怒っとんのは多分、自分自身に対してやと思うで?」
そうした複雑な気持ちも汲み取った上で、山崎は眈々と答える。
「気にせんとき、今は回復する事だけ考えとけばええんやさかい。ほれ、アーン。」
そして躊躇無く、木の匙を口の前に突き出した。
「何で土方さんが自分に怒るの?…て言うかアーンて…ナチュラルに恥ずい事しないでよ。重病人じゃあるまいし…」
匙を避けようと拒否の手を出し掛けた途端、
「…うっ、イテテ…」
たったそれだけで腕に痛みが走り、涙目になってしまう。
「阿呆、人の好意無下にすんなや。重病人やのうても動くのんもままならん、怪我人やっちゅう自覚持ち。」
「…はぁい…」
渋々大人しく言う事を聞き、
「アーンは?」
「…一々言わなくていいから。」
ヤケクソで口を開けると、ふわりと流れ込む柔らかな味わい。
「どや、美味いか?」
「…うん、美味しいデス。」
「そら良かった、やっぱし井上はんは天才やな。」
「……」
食べやすいように、わざわざおじやを頼んで作ってもらったのかと思えば有難くもあり、時折見せる気味が悪くなる程の優しさに正直戸惑う。
…忠告の為にキスしたり、下着盗んでまで真似て作ってみたり…良くわかんない人だなぁ…
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