稽古はツラいよ?

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「…甘えるって言ってもなぁ…」 池田屋で助けて貰い、この場所に置いて貰い、無知な自分は生活全般において充分甘えていると思っていた。 稽古にしても生きる為にと真剣に始めたが、余分な迷惑をかけているのだとは認識している。 これだけ心苦しい想いの中で、まだまだ図太くあれと山崎は言うのだ。 幾ら何でもそこまで鈍くはなれないのは、生まれ持った性分が大きいだろう。 「…よっこい、イテテテ…」 喉が渇き、山崎が気を利かせ置いていったお茶を飲もうと起き上がれば、ギシギシと骨も肉も軋む。 「あー…うぅー…」 唸りながら掴んだ湯呑み。 「…わぁ…」 感嘆とした声が漏れたのは、水面に揺らめく茶柱が二本も立っていたからである。 それが偶然なのか意図的なのかはわからないが。 「ふふ…何か、良い事あるのかな?」 こんな些細な出来事でも、嬉しくなる自分はまだ大丈夫だと思えた。 「よっ、加減はどうだ?」 少しして山崎の言う通り原田達が部屋を訪れ、これからの稽古の在り方を提案する。 「お前の場合、腕がどうとか言う前に体を鍛えにゃ始まんねえだろうな。」 「はあ…」 要は武器を使用する以前の問題らしい。 「力負けするのは仕方ないが、体力は別物だ。血を流さず身を守る術を覚えるに辺り、一番重要なのは逸何時も瞬時に動ける状態であるべき事と言えよう。」
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