奇跡は突然やって来る。

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体調が悪いと不安になる気持ちはわかる。 手を握り返して乱れた前髪を払ってあげた。 「何かして欲しい事とかある?」 「…傍にいてくれる?」 小さいけれど照れて甘えた声を出されてしまった。 「いるよ。…土方さんにも言われたし。」 「…そうだね。…私の傍から離れてはダメだよ?」 「え?あ、うん、わかった。」 心配しなくても右も左もわからない殺人現場を、一人でウロつく度胸なんてないよ。 だけど…どうしよう…。 この騒動が収まったら…あたしはどうなるんだろう? それきり静かになった総司さんの手を握り締めたまま、辺りをぐるっと見回した。 時代劇に出て来るような木造の建物が並んでいて、道も土や砂利ばかりでコンクリートは全く見当たらない。 闇夜に家から漏れる弱めの明かりと、動いている人は青い羽織りを着た人ばかり。 惨劇があった家には『池田屋』って逆さまに書いてあって。 改めてここは、あたしがいた世界とは違うとこだと痛感した。 単車の事故はどうなったのかな…? 蓮司はどうなったんだろ? 同じように変なトコに行っちゃったのかな? それとも大怪我して入院してるかも知れない。 あたしみたいに、訳の解らない事になっていないと良いな…と思った。 、
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