郷に入っては郷に従え

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あの事故から一ヶ月が経ち… 平助の額の傷は抜糸を終え、俺の左手首は今だギブスで固定されている。 ものの見事にポッキリと折れたせいで、リハビリ入れて全治二ヶ月から三ヶ月ってとこらしい。 骨が再生してくっ付くまで、固定のボルトもそのままだ。 要するに、とっくに抜糸した平助と違い、俺の完治はまだまだ先って事で…安静にしてなきゃなんねえってえのに、こいつときたら。 「えー、そんなに怒っちゃイヤン。」 俺と暮らし始めて二週間ずっとテンションが高くて、何かと疲れさせてくれる。 「…真似のつもりか?雅はそんなブリブリしてねえし、ヒゲも生えてねえよ。」 いくら薄くても少なくてもヒゲはヒゲ、勝手な話しゲンナリすっから雅の顔に生やして欲しくはないもんだ。 「ヤダ酷いっ、乙女に向かって髭だなんて!」 既に俺が雅に惚れていると知っていて、性懲りも無く芝居がかった反応を寄越すのがマジウザい。 「誰が乙女だ、乙女にそんなモン付いてるかバカ。」 「アラ…不思議、いつの間にこんなものが…嫌いにならないでねん?」 視線を送った先には、パジャマのズボン越しに張った朝特有のテントが高々と聳え、見た目がどうあれこいつは同性なんだと改めて再認識する。 「…最初から付いてるだろ。いい加減、その口調やめねえと本気で怒んぞ。」 「…ハァーイ。ちえっ、つまんないの~、ちょっとお茶目な冗談じゃんか。」 「グダグダるせえ、毎朝毎朝しつこいんだよ。鬱陶しい。何で自分の布団で大人しく寝れねえんだ?」 そう、この男…雅の兄だと名乗る同じツラした平助ってヤツは… 雅と入れ違いに過去から未来へ飛ばされたタイムスリッパーな訳だが、縁あって俺が身元引受人になっている。
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