郷に入っては郷に従え

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「よし、一丁あがり。蓮司、ご飯よそって?」 「…ハイよ。」 今朝の献立は白米に出し巻き卵、茄子と玉葱と油揚げの入った味噌汁、沢庵にプチトマト付きだ。 一人で暮らしてた時は珈琲とパンだけだったのに、今ではすっかり健康的な食生活に改善されてしまっている。 平助曰く、『朝飯は1日の活動源』なんだそうな。 そういうところは、昔の方がちゃんとしてるんだろうが… 「どう?」 「ああ…美味い。」 「良かったぁ、飯のおかわりは?」 「…いる。」 「はい、どうぞ。」 「…ん、サンキュ。」 ーーー夫婦かっ! というツッコミも今更な程に違和感無く馴染んだ日常風景に、少し虚しくなるのは察して欲しい。 相手が雅や異性なら未だしも、どうあっても朝一から野郎と交わす会話じゃないと思う、普通は。 「蓮司ぃ、今日もどっか連れてってよ。」 「はあ?お前なぁ…ここ最近、デパートやらスーパーやら通い詰めじゃねえか。…俺、まだ完治してねえんだぞ、いい加減シンドいわ。」 そりゃ最初の頃はどうしても必要な最低限の生活必需品や食料は、無理してでも買いに行ってたけども。 共用出来ない歯ブラシや靴なんかはまさにそれ。 しかもこいつが来てから俺も三度三度食うようになったし、チビのクセにめちゃくちゃ燃費の悪いこいつはかなりの大食漢で、育つ見込みもなさそうなのに成長期の男以上に家計を圧迫している。 電子レンジにハマった当初は弁当を幾つも買い、何度チンチンやらされた事か。 でも金の出処は平助から託された小判な訳で… ここだけの話し金の値打ちが高騰してる現代で、たった一枚でも相当な値が付いた。 つまりは平助が大蔵省。 珍しい物も沢山あるだろうし、多少の浪費には目を瞑るべきと思… 「あ、ごめーん。もう無くなっちゃった。」 …ってっけど、流石に朝から五合炊きや味噌汁が空になっても足りないって顔されっと、そのポッコリ膨らんだ胃に一発入れてリバースしたブツを、また口に詰め込んでやりたい衝動に駆られてしまうのも仕方無くないか?
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