郷に入っては郷に従え

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数年前のヤンキー時代に戻りそうになるのは、この一ヶ月間仕事もせずバイクにも乗れないストレスが溜まってるせいかも知れない。 とは言え、俺の愛車は見事に大破し廃車コース。 保険会社の代理人が言うには3対7で相手側の過失が高く、車体価格相場の7割が支払われるらしいから、その範囲内で中古を買い直そうか奮発して新車にしようか目下検討中だ。 …気に入ってたんだけどなぁ…俺のCB改。 族の頃から気合い入れて改造や手入れしてたっつーのに、壊れる時は本当に一瞬の出来事だった。 相手は俺と変わんねえガキのいるリーマンオヤジ。 疲れからうたた寝してたらしく、サツにしょっ引かれてたっけ。 本来なら社会復帰出来なくなるまで叩きのめしてやりたい程恨んじゃいるのに、平助の出現で状況が忙しなくなって、怒りの矛先を無理矢理へし折った形に収まり何とも…胸のモヤモヤが取れないと言うか、割と臨機応変に収縮自在だと自惚れてた俺のキャパは結構リミッターギリギリだ。 「…足りねえならコレも食えよ。」 まだ物欲しそうに指を咥えて俺の飯を見つめられると、与えてやんなきゃいけねえ気持ちになってくる。 「えっ、いいの!?…って、ダメだよ!蓮司も怪我が早く治るように、栄養取らなきゃ!」 「…ヨダレ、出てんぞ。」 「うっ…」 「いいから食え。俺はもう入んねえから。」 目を輝かせてる平助の前に皿や茶碗を動かすと、 「…そう?じゃあ遠慮無く、いっただっきまぁーす!」 またスゲえ勢いで口にかき込み出す。 …何か、めちゃくちゃ食い意地きたねぇ小動物を飼ってるみてえな気分だ…
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