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とにかく今重要なのは、変態オヤジじゃねえ事は確かだ。
「…つーかお前、頭に付けてるそのヘアピン…飾りはどっから持って来た?」
悪趣味なギラギラしたド派手ヘアピンは数年前、族にいた頃の先輩の妹が突然押し掛けて来た時に付けてた記憶がバッチリある。
その女は現役当時の総長の妹。
迷惑って以外別に何の感情も湧かず断ったら、
『皆にもお兄ちゃんにも、同棲するって言って出て来たんだもん!今更帰れないよっ!』
とかとんでもない事言いやがって、途方に暮れた俺は先輩にソッコー連絡を入れたが、
『あー、だろうとは思ったんだがなぁ…可愛い妹の頼みだし言い出したら聞かねえし。お前彼女いねえんだろ?なら暫く気の済むまで、置いてやってくんね?もしかすっと、ムラムラクるかも知んねえじゃん?』
話しにならねえ、馬鹿アニキっぷりを披露されただけ。
そんで仕方なくここに置いてやったけども、その代わり俺はといえば仕事仲間の家を転々とし、先輩の妹が諦めて帰るまでアパートには寄り付きもしなかった。
したら先輩には毎日みてえに電話で文句を言われ、ついに我慢の限界を超えた俺は最後にプッツン。
『アンタ、俺とタイマン張るか?』
先輩であっても総長やってたとしても、喧嘩なら俺のが数段も強い。
『俺が負けたら妹と付き合ってやるから、アンタが負けたらさっさと連れて帰ってくれ。』
溺愛している妹の為に不利な条件を飲んだアニキは、結局顔面を腫らし、
『男に二言はねえよ』
暴れて泣きじゃくる妹を、無理矢理担ぎ連れ帰った。
まさかあの時…暴れた拍子にでも部屋に落ちてたのか?
思い出したくもない思い出を遡っていると、
「あーコレ?コレはねぇ、台所の棚の隙間に落ちてたんだ。黒いテカテカの虫が逃げてって覗いたらね~、こっちの方が珍しい色でキラキラ光ってて綺麗だったんだよね~」
まるで宝物でも見つけたガキみてえな、いい笑顔が返って来た。
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