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足早に前を歩く平助。
一度行った場所なら、もう殆ど一人でも大丈夫なんじゃないかって位、迷い無く進んで行く。
けど、
「おい!平助、赤だぞ!」
「っ、とと…」
やっぱり何処か危なっかしくて目が離せねえんだよなぁ…
「危ねえだろーが!いつまでも怒ってねえで、ちゃんと周り見て歩けよ!」
腕を引いた勢いで俺の胸に肩をぶつけた平助は、ギロっと睨み上げる。
「煩いなあっ!ちゃんと見てても、まだクラクラするんですうーっ!誰のせいでこうなったと思ってんの!?虫退治しただけで、何で俺が失神するまで首絞めるかな!?ちゃんと謝れ!謝っても許さないけど、謝れバカ蓮司!!」
…そう、実は何を隠そうあの時、オトしそうになったんじゃなくて結局、とどのつまり、結果的に…本気でオトしちまった訳なんだが。
一時間程して目覚めた後、ひたすら口論しまくったもののお互い一歩も引かず、ついに我慢の限界が来て飛び出した平助を追いかけ今に至る。
だってよ、信じられるか!?箸だぞ!?人の箸でゴッキー串刺しとか、マジで有り得ねえかんな!!
二度とするなと叱った俺に対して平助は、
『そんなの洗えばまた使えるだろ!たかが虫如きで死にそうになったこっちの身にもなってよね!この貧弱者っ!!』
納得してはくれなかった。
『んだと…このバカチビ!』
そして、状況は更に悪化。
きっと隣の部屋のおっさんは、聞き耳立てて興奮してやがっただろう。
まあな…気絶させちまったのはやり過ぎだったし、釣られてエキサイティングする必要はなかったんだが、売り言葉に買い言葉で謝る機会を逃しちまったんだから仕方ない。
目の前でまた、プリプリ頬を膨らまし瞳を潤ませて怒る平助。
最初の頃は雅と同じツラしてやがっても、アニキなだけあって落ち着いてんなぁとか思っていたが本性が曝け出されるにつれ、そりゃあとんでもねえ間違いだと気付かされた。
…良く似てやがるぜ、この双子。
いや、どっちかっつーと、現代社会に疎い分だけ平助のがよっぽど手が掛かる。
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