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流石鍛錬された新選組の幹部…とか思っていると。
「すげえな、ねーちゃん!」
「かっくいーっ!」
「いやぁ、どーもどーもぉ!」
ピーピーと煩い口笛が鳴りまくり、調子に乗った平助が片手を振って応えてやがった。
「げ…」
辺りを見渡せばいつの間にか野次馬に囲まれ、そいつらは平助の早技でも見たのかやたらテンションが高い。
言い訳じゃねえが、ホントに目立つつもりはなかった。
何やってんだ俺!言ってる事とやってる事がバラバラじゃねえか!!
とにかく、ここは逃げるが勝ちだ!
「きゃあっ!?」
掴んでた女をオタクらしい連中が固まる野次馬の群れへ押し付け、平助へ手を伸ばす。
「へ、じゃない、雅っ、来い!」
んで何でだか超ご機嫌に早変わりしてた平助は、
「ハイハーイ、よっと。」
「ぎゃっ!?」
捻った腕を離したはいいが、前屈みになった女の両肩に手をかけ、跳び箱みてえに飛んで俺の手を強く握った。
「これ以上目立つな、バカ!」
「えーっ!?文句言わないでよ!先に騒ぎ起こしたの、蓮司じゃんかっ!」
「う、うるせえっ!ハプニングってヤツだ!」
「あははっ!何それーー!?美味しいの!?」
「うっわーお前やっぱムカつくな!!いいから全力で走れっ!」
突然、野次馬を掻き分けての全力疾走。
くそっ、左腕痛えっ!!踏んだり蹴ったりだ、こんチクショーがあぁーーーっ!!
何故に野郎と手を繋ぎ仲良く逃避行するハメになってんのか、俺の複雑過ぎる心中を察してくれるヤツなんて、きっと何処にもいやしねえだろうなぁ…
そんなくだらない感傷に浸りながら延々と走り続け、俺達は何とか無事に目的地へ辿り着いたんだ。
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