奇跡は突然やって来る。

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「ったくよ…幸せそうな顔してらぁ。」 飛び出た手足を板に乗せ直しながら、二人は苦笑いしてる。 「あ、平助、お前は俺がおぶって帰るからな。」 「え…?なんでおんぶ?」 急に左之さんがあたしに貸してくれてた青い羽織りを、早く脱げって言う。 「ご、ごめんなさい。有難うございました。」 渡そうとすると、それを新八さんが受け取り左之さんが膝をついてしゃがみ込む。 「?」 首を傾げてきょとんとすると、 「いいから早く乗れ。」 と急かされる。 何でだろう? 疑問に思いながら、 「失礼…します。」 怖ず怖ずと広い背中に抱き着けば、肩にさっきの羽織りが掛けられた。 「よっ…と。お前スゲー軽いのな。」 大きな羽織りを二人で被った形に新八さんが整えて、 「体ビタッとくっつけて丸くなっとけ。お前の出で立ちは目立ち過ぎる。」 左之さんはなるべくデニムとブーツが見えないように、足の高い位置で腕を絡めてた。 この人達は絶対あたしが『平助』じゃないって気付いてるのに、凄く優しく接してくれる。 よっぽど『平助』って人と仲良しで、大好きだったのかも知れない。 だから勘違いされるくらいそっくりなあたしを、放っておけないんだろうな… 『藤堂平助』 そんなにいい人だったの? きっと貴方がいい人だったから、今あたしはこの二人に助けられてるんだ。
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