2279人が本棚に入れています
本棚に追加
おばちゃん達はどうにか迷子をデパート側へ引き渡して、アナウンスして貰うつもりの親切心だろうが、パニックを起こしてるチビガキがそれを理解出来よう筈も無い。
「お名前は何て言うの?言えるかな?」
「パパのお名前知ってる?」
「パパを探してあげるから、ね?」
「やっ、やああぁぁーーーーっっ!」
不用意に握ろうとした小さな手は完全拒否。
ついでに身を捩り蹲(ウズクマ)って震えながら丸くなった。
「うっ、ヒッ、パーパッ!パーパァァァーーー!!」
こうなると俺的には段々、子兎がデッカい熊の集団に今にも食われそうとか、異星人に攫われかけてる地球の子供、みたいな図に見えて来た。
急に親が消え一人ぼっちになった時の絶望と…恐怖。
悲しいかなその感情は、体験した者でないとわかってやれない。
だから…放って置けなかった。
平助を待たせている事は、勿論頭を過ったけど…
あいつはこの子と違って大人だ。
少しくらい待たせても、またアイスでご機嫌とっときゃ大丈夫だろって考えて。
「すんません。ちょっと、いいっスか?」
俺の足は迷わず、囲いの中へと進んで行った。
最初のコメントを投稿しよう!