郷に入っては郷に従え

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何だコイツ?って沢山の好奇の目が、酷く居心地悪い。 「あなた、この子を知ってるの?」 代表のオバハンは訝し気に俺を見る。 「いえ?1ミクロンも。…それが何か?」 あ、やべ。 棘のある言い方しちまった。 こんな時は仕事用の、貼り付けた笑顔を振り撒くに限るか。 今度は頬筋を調節し、緩やかに微笑む。 「少しだけ、任せてもらえませんか?」 声色も出来るだけ柔らかく。 「ま、まぁ少しなら…ねえ?」 ーー何でてめえの許可がいんだよ。 上から目線のオバハンに内心ツッコミながら、 「どうも。」 礼を言おうとする自分に吐き気がした。 輪の中心のミニマム怪獣は、以前『パパ』を連呼し号泣中。 そこから一歩くらい離れた距離で、俺も腰を下ろして。 「こんにちは。俺、蓮司って言うんだ。」 首を傾げて、小さな手の平に隠れた顔を覗き込む。 「うえっ、うえっ、パァーパァー!」 泣き止む気配は全く無いけど。 「今日は友達と買い物に来たんだけどさ、その友達がどっかに行っちゃって今探してんだよね。…俺の友達知らない?」 勝手に幼稚な一人芝居を始めて、 「そっか、知らないのか…困ったな…友達がいないから家に帰れないんだ。どうしようかな…また探しに行こうかな?でも、ここは広いから探すの大変そうだし……そうだ、マイク使って大きな声で呼んでみよう。そしたらすぐに気付いてくれるかも知れないし。うん、そうしよう。」 ポンと手を打ち、勝手に納得の自己完結。 きっと周りの連中からは、イタい奴に見られてると思う。 けど、それはそれで別にいい。 今、注意を引くべきは小さな女の子。 目線も会話レベルも同じ位置まで落とすのは、警戒心を解く為に最低限必要な条件。 初めて連れてかれた孤児院で、この子と同じ体験したからこそ気持ちが解るっつーか…経験者は語るってヤツ? まぁでも、もし巨人が寄ってたかって早口で話しかけて来たら、大人の俺でもビビるわ、マジで。
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