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だからちょっとだけ待って、
「けどアレだな…一人で行くのは勇気がいるから、誰かが一緒に行ってくれると助かるんだけど。…あーあ、誰かいないかなぁ?」
キョロキョロ辺りを見渡していたら、女の子はいつの間にか泣き止んでて、赤くてくりっとした兎目が俺を見てた。
興味を示してくれたらそれでOK。
最後の仕上げは微笑んで、
「…良かったら、兄ちゃんと一緒に行かないか?えっと…ナニちゃんかな?名前、何てーの?」
ゆっくりと手を差し出す。
女の子はその手をジッと見つめて、
「…ひめこ……にしだ、ひめこ…」
涙で湿った紅葉みたいに小さな手で、キュッと俺の人差し指を握った。
てんやわんやの騒動の後は女の子をデパートの店員に任せ…るつもりが、
「いぃやぁ~っ!おにいちゃん、いっちゃいやあぁぁーーーっ!!」
「うおっ!?」
変に懐かれちまって、
「すみません、この子の親御さんがお見えになるまで、そばにいてあげて下さいませんか?」
「私達じゃ手に負えそうにないので…」
「…ハァ…わかりました。」
全力でしがみつくガキを引っぺがす訳にもいかず、保護者代わりをする羽目に。
父親が迎えに来たところでやっと平助のトコに戻れたけど…
予測もしなかった事態だ。
どこにも姿が無くて冷や汗が噴き出す。
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