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エスカレーターに乗って目指したのは、一番居て欲しくはない場所。
今迄の何倍も鼓動が跳ねる。
結末がわかっているからこそ話題を避け、ひた隠しにしていた事実。
傷付けたくないとか余計な心労を負わせたくないとか、そんなもんは俺の勝手な都合だったかも知れない。
けど絶望して苦しむのが目に見えてんのに、変える事が出来ない未来を教えてどうなるってんだよ!?
「ハアッ、ハアッ、ハアッ…」
辿り着いた書店で平助の姿を探す。
このデパートの本屋なんて寄った事も無く、広い店内ですぐに目的の棚までは行けなかった。
もどかしくて腹が立つ。
多分それらは教材関係にある筈だと来客者にチェックを入れながら、どんどん奥へ進んだ。
いなければいい…
思い過ごしであれば…
そんな淡いくて切実な期待は、脆くも崩れ去った。
「…平、助?」
「ーーっ、」
ビクリと震えた肩。
ゆっくり振り向いたその顔が、
「…蓮司…」
今にも泣き出しそうに微笑んでいて。
「…どこ行ってたの?…探しちゃったよ。」
「…うん、悪い。迷子がいてな…」
話しながらさり気なく閉じた本のタイトルは『新選組~幕末を生きた男達~』
「…そっか。それで?親は見つかったの?」
そしてその本は棚に戻され、平助の手から離れた。
「ああ…見つかった。」
「そう、良かったね。」
平気なツラ作ってんじゃねえよっ!て、支えてやりたかったのに…
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