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そんなツラさせてんのは俺の所為だって気付いちまったら、もう何も言えやしねえ。
いくら昔の字がミミズみたいだっつっても、文献の資料を俺が少しだけ拾って読めるように、平助だって現代の本を多少理解出来る程度の、教養くらいはあるだろう。
もしかすると平助は、こういうチャンスをずっと窺っていたのかも知れない。
今迄真実に触れるのが怖くて隠し続けてた俺と違い、過酷な運命と向き合うつもりでいたのだとしたら…
自分のヘタレ具合に、ほとほと情けなくなる。
『ゴメン』
そう謝るのは簡単だが、それは違うと思った。
何故なら歴史を語るにあたり、平助の死がどれほど残酷であろうと美化されていようと、真実を知られたからといって謝罪するのは、その時代…覚悟を持って決断した平助の生き様に同情しているのと同じで、それは侮辱だとも思えたからだ。
「…平助。」
「何?」
「…帰ったら…話したい事があるんだ。…聞いてくれるか?」
「…ん。」
歩き始めた二人の手は、不安を共有し合ってるみてえに自然と繋がっていた。
最初の目的通り一応服は買ってから、また手をつないで家路を急ぐ。
二人共、始終無言だった。
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