奇跡は突然やって来る。

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言われるがままに首に腕を回し、ぎゅっとしがみつく。 「…ありがとうね。」 耳元で内緒話しみたいに囁けば、 「お、おう。」 返事をしながら耳が真っ赤になっていた。 「いいな~左之。…代ってやろうか?」 「うるせぇっ!代わんねぇよ!」 二人の奇妙なやり取りを聞きながら、少し見晴らしが良くなった位置で全体を見る。 前の方に知ってる顔がチラホラで、後の知らない人達は雑に列を作っていた。 最後尾でおんぶして貰ってる内に、総司さんや負傷した人達は、板で真ん中付近に担がれて連れて行かれてる。 「おらっ!胸張って歩け!!」 池田屋の中で『総司さんを頼む』って言った人が、拳を振り上げて大声を出した。 それに応えて男の一団も拳を挙げた。 迫力に気圧されて鳥肌が立ち、心臓が早鐘を打っている。 「平助、大丈夫だから。」 ほぼ顔が隣にあるから、左之さんは小さな声で呟く。 きっと、あたしの心臓の音が伝わったんだと思う。 「一緒にいてやるから、な?」 新八さんにも頭を撫でられた。 「…うん。」 ちょっとだけ笑いながら頷くと、二人は皆に遅れて歩きだした。 、
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