時は金なり試練は愛なり

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近藤さん曰く、 「我々が大樹公より名を頂いてからというもの、皆も日々精進鍛錬を怠らず務めに励んでいる事だろう。然し乍ら…個々の負担が過ぎれば、その能力も十二分に発揮するのは難しい。つまり人手不足だという事実は否めん。そこでだ。いっそ、即戦力となり得る有望な人材をこちらから赴いて説き伏せ、入隊させようと思うのだが…どうだ?異論はあるか?」 と言う事らしかった。 男達は一斉にざわめき立ち、 「また藪から棒に…」 武田さんからは、心底嫌そうな呟きも聞こえる。 あたし個人としては、 長えよ。簡潔に『仕事忙しくて手が足りないから、スカウトして来るね。』って言やいーじゃんよ。 とツッコミ入れつつ、 知らない人が増えるのは気ィ使うからヤダなぁ… とか、 まぁね、仕事が減るのは大歓迎なんだけどもさ。 とかお気楽に考えていただけ。 要するに、自分には関係の無い話しだと決めつけて、他人事のようにボケッと聞いていた。 「有望な人材って…即戦力と言うからにはアテがあるんですか?」 眉を顰めた沖田さんは、ちょっと不機嫌そうな顔。 でも近藤さんの方はそれも意に介さず、 「アテならある。以前より目を付けていた男がいてな。聞けば江戸にて北辰一刀流の道場を構えている、優秀な逸材だというではないか。そうだな?永倉君。」 新八さんへ視線を移す。 「ああ、ヤツは俺らの同門で名を伊東甲子太郎ってんだ。そりゃもうエラい別嬪さんなんだがよ、見た目いい意味で裏切る凄腕の持ち主だ。」 ふうん、伊東甲子太郎…ねえ? サラッとだけど一応は、こっちに来てから教えられた知識がある。 北辰一刀流。 本物の平助が極めて来た剣術の流派の名だ。 他にも近藤さんは天然理心流の四代目道統で沖田はそこの塾頭、左之さんは種田流槍術で、その他神道無念流、鏡心明智流、小野派一刀流、心形刀流…………あり?何だったっけ? ……ぬあーーーっ!忘れちゃったよーーーーっ!! と、とにかく数え上げたら切りが無い、其々に所属している流派があるらしい。 土方さんに至っては、最後に辿り着いたのが近藤さんトコってだけで、ほぼ我流の喧嘩殺法。 つまりは傍迷惑な腕試しで勝負を挑み、看板を潰して回っていたという事らしく。 元祖ヤンキー…遡れば蓮司の先輩みたいなもんだね、うん。
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