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珍しい、左之さんの低音が響く。
これは不機嫌を通り越して、怒る寸前なんだとわかった。
室内の空気は一変、二人に注目が集まった隙に素知らぬ顔して手を下ろし、ホッと一息したのも束の間。
「…どうもこうもねえよ。それが最善の策ってこった。」
「〝今の〟平助でもか?」
「まぁな。俺達の中で過去、伊東に面識あんのは平助だけだ。普通に考えれば仲立ちには適任だろうが。」
「正気の沙汰とは思えねえな。…何もかもぶち壊すつもりか?」
「そうならねえように、俺らが付いてくんだよ。本来、円滑に進めんなら先に出向かせても良かったんだが……それなりに配慮はしてるつもりだぜ?」
「ーーふざけんな!どの口がっ」
興奮していつの間にか、お互いの唾が顔にかかる程接近してた二人。
先に左之さんが襟元を掴み上げ、鋭い眼光で睨み合う。
この人達は基本荒いけど、普段は揉めるにしても切磋琢磨の末とか、戯れ合いの延長線上的な絡みで喧嘩に発展するだけで和やかさは常にあったから、心配するに至らなかった訳で。
意見が割れて真剣に言い合ってんのって、初めて見た気がする。
しかも、原因はあたしらしい。
いつも過保護過ぎじゃないかってくらい位に優しくて、鬱陶しさすら感じる事もあったけど…
「二人共ヤメてよ!」
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