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我慢、出来なかった。
だって新八さんと左之さんは…
突然この時代に飛ばされて、パニクったまま殺されそうになってたあたしを、最初っから…
『平助』とは他人の空似だとわかっていて、身を呈して守ってくれた恩人だ。
皆と衣食を共にするようになってからも、特にこの二人は『平助』と仲が良かった分やりづらかったろうに、ずっと…ずっと気にかけてくれていた。
そんな二人があたしせいで喧嘩するのを、黙って見ているだけなんて…絶対無理。
でも…歴史的にはどうなの?
間違った選択をすれば、とんでもない事になっちゃうんじゃ…
あたしは常に『平助』だったらどうするかって、考えなくちゃいけなくて。
それに、ホントだったら。
これが『平助』だったなら、揉め事なんかにならなかっただろうし………ん?
その時、集まる視線の中で、武田さんだけが訝し気にあたしを見てるのに気付いた。
…即答しないと、やっぱり変だって思うよね…
〝出立は明日にでも〟
考えさせて下さい、なんて言える程の時間も余裕も無い。
多分今この瞬間が、あたしにとって重要なターニングポイントになる気がする。
誤った選択が命を危険に晒す。
ゴクリ、と唾を飲み込み…一大決心。
「ーーやだなぁ、左之さんも新八さんもちょっと落ち着きなって!命令なんだしさっ、俺、江戸に行って来る!!」
ビビッちゃってて仲裁役としてはかなり頼りないけど、それぞれの袖をしがみ付くようにきつく握り締め、
「だからっ、喧嘩しないでよ!ねっ!?」
背の高い二人を見上げながら懇願した。
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