時は金なり試練は愛なり

12/26
前へ
/412ページ
次へ
我慢、出来なかった。 だって新八さんと左之さんは… 突然この時代に飛ばされて、パニクったまま殺されそうになってたあたしを、最初っから… 『平助』とは他人の空似だとわかっていて、身を呈して守ってくれた恩人だ。 皆と衣食を共にするようになってからも、特にこの二人は『平助』と仲が良かった分やりづらかったろうに、ずっと…ずっと気にかけてくれていた。 そんな二人があたしせいで喧嘩するのを、黙って見ているだけなんて…絶対無理。 でも…歴史的にはどうなの? 間違った選択をすれば、とんでもない事になっちゃうんじゃ… あたしは常に『平助』だったらどうするかって、考えなくちゃいけなくて。 それに、ホントだったら。 これが『平助』だったなら、揉め事なんかにならなかっただろうし………ん? その時、集まる視線の中で、武田さんだけが訝し気にあたしを見てるのに気付いた。 …即答しないと、やっぱり変だって思うよね… 〝出立は明日にでも〟 考えさせて下さい、なんて言える程の時間も余裕も無い。 多分今この瞬間が、あたしにとって重要なターニングポイントになる気がする。 誤った選択が命を危険に晒す。 ゴクリ、と唾を飲み込み…一大決心。 「ーーやだなぁ、左之さんも新八さんもちょっと落ち着きなって!命令なんだしさっ、俺、江戸に行って来る!!」 ビビッちゃってて仲裁役としてはかなり頼りないけど、それぞれの袖をしがみ付くようにきつく握り締め、 「だからっ、喧嘩しないでよ!ねっ!?」 背の高い二人を見上げながら懇願した。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加