奇跡は突然やって来る。

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朝っぱらからの行進は人々の注目を集めてたけど、皆の目線は冷たく感じた。 「…壬生浪(ミブロ)が。」 「おお、恐ろしい…」 ヒソヒソと話す声は、この人達が嫌われ者なんだって教えてくれる。 そりゃ血まみれの格好の集団が、大手振って歩いてたら『人を沢山殺して来ました』って、宣言してるようなモンだし気分悪くて当たり前か… でもこんなに堂々としてるんだから、悪人って訳じゃなくて『警察』とか、『自衛隊』の類なのかな? 昔は人を殺しても、罪になる事はなかったのかも知れない。 テレビの時代劇とかでも、しょっちゅう誰かが斬られてたり、殺されたりしてたし。 高い背に揺られキョロキョロと、物珍しい風景を眺める。 ビルもない、車も信号も電線もない、列ぶのは木造の建物に住んでる人は皆着物。 全てが作り物には到底見えない、生活感のある町並み。 ここは一体あたしがいた時代から、何十年…いや何百年前なんだろうか? 「ねぇ、左之さん?」 「ん?どうした。」 「ここは…今、って言うか…今年は何年なの?」 いきなり変な質問したのに、 「今年は文久…いや、元治元年だな。」 普通に答えてくれる。 元治…知らないや… 「西暦ってわかる?」 「西暦…んー、知らねぇな。おい新八つぁん、西暦って知ってっか?」 あたし達の後ろを歩く新八さんは、腕組みして欠伸をしていた。
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