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困り果て、懐から差し出されたガサガサの紙切れ。
「こんなんで拭けるかぁーーっ!鼻の周り痛いしお肌も荒れるわ!大体これ、所々黒く汚れてっ……ます……けど…も……?」
勢いに任せ盛大に破いてやろうと思って、ビロンとおっ広げてみれば。
ミミズが這ったみたいな字で書かれた、
『恋し土方様へ』
ってタイトルらしきものだけは、どうにかこうにかバッチリと読み取れて。
「ーーーあ!?そ、そそそそそれはそのっ、あのっ、だなっ…」
「……………」
身体全体がワナワナと震え出し力が入り過ぎたせいで、憐れラブレターはグチャグチャに。
「……あんたって人は!あたしがこんな大変な目に合ってるって時に、他所の女とラブラブイチャイチャしてたんかいっ!」
「うわっ!?ち、違う!誤解だっ!コレは馴染みの遊女が一方的に送って来てだな!」
「馴染みの遊女!?こんのタラシ野郎!真剣に話し合ったりしてないでしょ!?真面目に仕事する気がないなら、あんたが代わりに江戸に行きゃいいじゃないよ!!」
送り主には申し訳ないけど、怒りの余りラブレターは適当に丸めて土方さんへ投げ付けてやった。
「バッ、カ野郎!お前っ、人の気持ちが込められた大事な文を、粗末に扱うんじゃねえ!バチが当たんぞ!?」
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