時は金なり試練は愛なり

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突然掌を返せば、 「そ…そうか?ゴホン、わかったならそれでいい。」 土方さんはちょっと拍子抜けしたマヌケ顔で、座布団に腰を下ろした。 ホラね。黙って言う事を利いておけば、文句無いんでしょ? 押さえ込んだ感情は吐き出す行き場が無くて、慣れるまで時間も掛かるし辛いだろうけど。 「なら、急いで旅支度しろ。必要なモンは新八か山崎にでも聞いて」 「了解……副長殿。」 それがこの人達が求める〝平助〟なら…従うしかないじゃない。 「あ?副長殿だぁ?…嫌味のつもりかよ。」 「…違うよ。」 諦めただけ。 不機嫌な表情も、もうだいぶ見慣れてしまった。 「…じゃあ部屋に戻るから。」 「ああ、今宵は早めに寝るんだぞ?」 「…うん、そうする。」 振り向かず障子に手を伸ばした時、 「平助。」 背後から声を掛けられ、 「…伊東には充分に気を付けろよ。新八の口振りだと、腕は随分たつようだが、相当灰汁の強い奴らしいからな。」 土方さんがクソ真面目に注意を促して来たけれど… 『あんたもね』 って腹の内では鼻で笑いながら、 「…うん、わかった。」 ただ生返事を返して、直ぐに部屋の障子を閉めた。
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