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ああ…凄く息苦しい。
ううん、『生き苦しい』の方が正しいかも。
いつからこんな風に人の顔色を伺ったり、物分りの良い振りが上手くなっちゃったんだか。
このままだとあたしは一生『雅』には戻れないかも知れないな…
自分が失われていくような感覚に襲われ、ただやたらと気持ち悪かった。
魂の抜け殻状態で廊下をゆっくり歩いていると…
ドタバタ煩い足音が迫って来て、
「ーー平助!」
「…あ、左之さグフッ!?」
巨体が突進の勢いを緩めず、いきなり抱き付いて来る。
「大丈夫だったか!?…二人の喚き声、俺達んトコまで聴こえてて…近藤さんも心配してたぞ。その…お前が土方さんに泣かされてんじゃねえかって。」
込められた両腕の力。
相変わらず…必要以上にガッチリしてて、男臭さ満載だわ。
「…痛いって、左之さん。」
「お…っと、悪りい…」
緩められた腕の中で、
「平気だよ、喧嘩した訳じゃないから。」
見上げながら微笑むと、
「そう、なのか?」
ちょっとだけ疑いの眼差しで見つめ返される。
「うん、大丈夫。…あのね、俺さ、江戸に行くって決めたから…旅支度手伝ってくんない?」
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