2279人が本棚に入れています
本棚に追加
左之さんの優しさは時々、痛くて痛くてたまらない。
信じられない事への後ろめたさが、何時でも付きまとう。
その内、何らかの形で裏切られるんじゃないか…って。
「…お前がそう決めたなら、俺はもう何も言わねえが…これだけは教えといてやる。さっき近藤さんと話して分かった事があんだ。あのな…」
まだ心配しながら、あたしの顔を見下ろす左之さん。
「どうやら新八の奴…悪気があってお前の同行を、進言したんじゃねえらしいんだ。」
「…意味わかんないんですけど。」
あれを悪意と言わずば、何を悪意と呼ぶのだろう。
「お前が近頃めっきり気落ちしてるみてえだから、此処に籠もらせるよか、ちょいと遠くまで足伸ばして気晴らしさせたかったんだと。」
「…なによ、それ。誰も頼んでないし。」
世間ではそれを、有難迷惑と言うんだけどね。
眉間に深い皺が寄る。
「まあそう言ってやるな。近藤さんと土方さんなんて、最後まで反対したらしいぜ？…けど、山南さんは珍しく賛成してさ、『可愛い子には旅をさせろ』だの『獅子は我が子を苦渋の想いで谷底へ突き落とす』だの言って、二人を説得したんだってよ。」
…山南さんめ、余計な事を…
最初のコメントを投稿しよう！