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深く溜息を吐き出し、
「もういいよ、皆の気持ちはわかったから。」
軽く押し返すように身体を離す。
「…雅…」
すると左之さんは複雑そうな顔で。
「そんでもよ、悪気は無くても急過ぎだしな。…もっかい掛け合ってみるか?」
「…いい。」
本当は納得出来なくて不満だらけだけど、明日に迫った旅立ちを今更私一人が反発しても、覆すのは無理だってのはわかるから…
「何とかなるよ、多分。」
少しづつでも思い出して慣れるしかないんだろう。
幼少期に味わった、息の詰まるような孤独と疎外感を。
「雅…」
左之さんがまた心配そうな表情で見つめるけど。
「…違うよ、此処に居るのは『平助』でしょ?」
「………」
その同情という名の優しさは振り払って、
「さてと…なら早く準備しなくっちゃ。左之さん、色々教えて?」
沈んで行く心とは裏腹に、あたしの足は前へと進む。
自由になりたい、と…
『雅』に戻りたいという願いは、深く暗い奥底に仕舞い込んで。
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