花一匁(ハナイチモンメ)

5/29
前へ
/412ページ
次へ
人間何かしら良い所はあるもので。 一方こっちの連中は、 「どうすれば良いのやら…サッパリだ。」 「あー大丈夫大丈夫。俺らもふざけてっ時、たま~に入っちまったりすっけど盲になったこちゃねぇだろ?なあ山崎さんよ。」 「そうですね。洗い流すしか手はありませんし、武田殿を待ちましょう。」 「ほら、一番詳しいこいつが言うなら間違いねえって。」 「そ、そうか?なら…」 「飲み直そうぜ~、ホレ一献一献。」 「おっとっと、すまんなぁ。」 …おいおい… こんな調子でダメダメな大人っぷりを、恥ずかしげも無く見せつけている。 もしあたしが危険に晒されても、この人達は助けてくれるのだろうか?と不安になるくらいだ。 ……信用出来ねぇ…… 取り敢えずあたしはどうするべきか、固まったまま悩んでいると、 「あ、藤堂さんは今の内に厠(部屋の意)へ行かれたらどうですか?…今の内、ですよ?」 山崎さんが意味有り気に二度繰り返す。 それがやたらと不気味さを煽って、あたしは唾を飲み込んだ。 「…う、ん…わかった。じゃあ、行って来るね。」 と言っても部屋は隣りなんだけど。 薄情なのはあたしも同じで、尾形さんをチラチラ気にしながらも静かに退室。 「う~ん…」 同類に成り下がってしまった最低な気分だ。 その後戻って来た武田さんが率先して、甲斐甲斐しく尾形さんの世話をしたらしい事を、皆酔い潰してから戻って来た山崎さんが教えてくれて… 「自分、気付いとらんみたいやし教えといたるけどやな。…武田はん、狙っとるみたいやさかい気ぃつけなアカンで?」 「狙う?何を?」 「…『何を』ちゃうわ『誰を』やろ。藤堂はんアンタ、本気で言うとんの?」 「ほえ?」 「………このっ、天然ボケが!」 「ヒイッ!?」 何故か突然キレられ、布団の上に組み敷かれてしまった。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加