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仄暗い部屋の中。
30センチ程しか離れていない山崎さんの顔は、影を帯びてて表情が読み取れないけど。
ゆっくりとその距離が詰められる。
「山崎、さん?どうし…」
少しだけ角度を変え、尚も接近する美顔ドアップ。
ふと魅入ってしまい『黙ってりゃいい男なんだろうに』…と素直に思う。
ーーーーって、悠長に観察してる場合じゃないだろ!近い近いっ!鼻息かかってるってば!!
いくら鈍いあたしでも、このシチュエーションからの展開は想像がつく。
閉じてゆく瞼。
漂う色香に混ざった、本物の甘い香り。
「…眼ぇくらい閉じ。」
艶と熱を含んだお決まりの台詞。
こっ、これはっ!!
「う、わっ、ちょ、ちょいタンマ!冗談キツイって!」
キ、キスされるうぅーーっ!?
あたし達の間に恋愛感情なんて芽生えてる訳も無く、キレていたのに急に盛り出すとはどうにも理解不能である。
どうにか回避せねばと持てる力を全て使い、
「やだっ!やめっ」
お菓子を強請る子供みたいにバタくってやろうと試るも…
うっそおーーんっ!?ビクともしないじゃん!!
両腕も下半身も、上手い事押さえつけられていて。
そう言えばこの人、細身のくせにあたしを担いで走れる程の超人でしたっけか…
頼むからレスリング選手並の馬鹿力を婦女暴行なんて犯罪に使わないで、地球の明るい未来の為に活用して欲しいものだ。
とか、阿呆な考えを巡らせてる内に…もう数センチというところにまで唇が迫っていた。
「ぃやっ…!」
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