奇跡は突然やって来る。

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もしかして…。 「左之さん、怪我…あっ!新八さん!そう言えば斬られてたっ!!」 最初に庇ってくれた時、手を斬られてたハズなのに、普通にしてるから思いっきり忘れてた。 「ああ、コレか?親指の付け根、ちっと斬られただけだ。」 「…ごめんなさい。」 大丈夫な訳ない。だって斬られた時、痛そうに叫んでたもん…。 新八さんの右手には包帯みたいに布が巻いてあったけど、血が滲んで固まっている。 「何でお前が謝るんだよ。治療も済んでんだ。大した傷じゃねぇよ。」 そう言って笑い飛ばしてくれるけど、あたしの顔は強張っていた。 「だって屋根から飛び降りていなくなった後、また戦ってたんじゃないの?」 いつ戻って来たかは寝ちゃってたからわからないけど…。治療する暇があったんだろうか? 「ああ、残党狩りに行ったんだ。」 新八さんが、ニヤッと笑って言った。 残党狩りって…一晩中追いかけてまで、殺しに行ってたのか…。 こんなに親切にしてくれていても、刀を握れば人殺しを平気でする二人。 『平助』って人も、同じ事をしてたんだろうか? 「まぁ俺の事は気にすんな。名誉の負傷なんだぜ?」 そんな事自慢されても…と心が痛む。 「後でもう一回、ちゃんとお医者さんに診て貰ってね?」 「ああ、わかったよ。」 「左之さんは?怪我ない?」 「俺は何ともねぇよ。それより…もうすぐ頓所に着くぞ。」 …頓所? 顎を使って示すのは、長い塀が続くもっと先の大きな門だ。 、
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